今回は「スマホ脳」をご紹介いたします。
スマホの危険性を知らないあなた
その便利の陰に隠れたリスクをしらないあなた
脳に与える影響を知らないあなた
そんなあなたにこの本をご紹介いたします。
目次
作者紹介
アンデシュ・ハンセン 氏
作者は精神科医であり、名門カロリンスカ医科大学で医学を学んだ作者が
医学的な視点から、現代のデジタル社会が人間の脳に与える影響について本を書いております。
この本の紹介
この本では、各章を少しご紹介する形をとり、
この本でお伝えしたいことを独断と偏見でご紹介をいたします。
1章「脳はどのように進化してきたか」
進化とは環境に適応していく事
ここでは
アラスカにたどり着いたクマを例に考えていく。
極寒の環境で唯一の獲物であるアザラシに茶色の毛皮をしたクマはすぐに見つかってしまい、飢餓の脅威にさらされる。
そこで、なぜか突然変異し白い毛皮をしたクマが生まれる。
このクマはアザラシに見つかりにくく、生き延びる可能性が高くなった。
その結果、このクマが生存し、繁殖活動を行い似た遺伝子を持つ子孫が増え、白い毛皮のクマが増え、普通の毛皮のクマは生存競争に負け、やがてアラスカのクマは全て白い毛皮になった。
同様に人間の進化も考えていく。
10万年前のサバンナに生きる2人の女性を思い浮かべてみよう。
一人はカーリン。高カロリーの果実を1個食べると満足する。
もう一人はマリア。果実を見つけると、可能な限り食べてしまいたいという激しい欲求を感じる。
食べ物が今ほど豊富に無い時代、今日果実を見つけたとしても明日また果実を見つけられるとは限らない。
人口の15%~20%が飢餓で亡くなっていた時代、生き延びる可能性が高く子孫を残すのはマリアの方だ。
そうして何千年もかけて果実(カロリー)の欲求が一般的な性質になっていく。
だが、現代社会にカーリンとマリアがいたとしよう。
カーリンは毎日適度な食事を続けるが、マリアは毎日大量のカロリーを摂取する。(飢餓で亡くなる可能性はほとんど無いのに)
その結果カーリンの体は余分な体重が増え、糖尿病を発症する。
そんなカーリンの欲求を現代社会に生きる我々も引き継いでいるのだ。
かつての食べ物がない環境であれば、最高の特性であったがこれが裏目にでる。
実は、現代社会に適応できていないのは体だけでなく精神面でも同じことが言える。
祖先は常に危険に対する不安を感じ、危険を避けるための入念な計画のおかげで生き延びてきた。
多くの人が怪我で死んだり、ほかの人間に殺されたり、動物に食われたりする時代ではこの性格が必要だった。あくまでも昔は・・・
現代では歩いていていきなり蛇に噛まれることも、他人に殺されたりすることなんてほとんど無い。
それなのに、常に危険を感じていては心を病んでしまう。
このように、脳が適応している環境と現代社会の環境は異なっている部分が多数あるのだ。
我々の脳は現代の社会に適応できていない部分があるかもしれない。
それも本能的な部分で適応ができていない。
2章「ストレスの役割」
なぜストレスを感じるように進化してきたのか。
それは脅威に直面した際「闘争か逃走か」の選択を取るためだ。
例えば不意にライオンに遭遇すると、ストレスシステムが働き、全身からエネルギーをかき集め、心臓の鼓動を早くする。
なぜそのような反応になるのか。
それは、素早く攻撃に出るか(闘争か)、走って逃げるか(逃走か)の準備をしているのだ。
素早く決断してきた人が生存競争を勝ち抜くことができ、生き延びることができた。
だが、現代社会ではライオンではなく仕事の締め切りや住宅ローン、「いいね」がつかない事に対してストレスシステムが働くのだ。(まるで生死がかかっているかの様に)
また、脅威に対するストレスに似た感情として「不安」がある。
この感情は人間特有のもので、ほかの動物には見られない。
「この辺りネコが増えるかもしれない」とネズミは考えないが、
人間は「もしもうちの店でネズミが出たら?」「もしも会社でプレゼンに失敗したら?」と仮定のシナリオでもストレスシステムが働くようになっている。
これは未来を予測するという知性を得た代償なのかもしれない。
脳は現実の脅威と想像上の脅威を見分けることができないのだ。
そして、ストレスシステムが働いている際は「闘争か逃走か」の準備を最優先とするため、
睡眠・消化・繁殖行為などの様々な体の機能が後回しにされる。
ストレスを受け続けると、不眠や腹痛、性欲低下などが起きるのはこのためだ。
そして、その状態が続くと、うつ状態になる。
脅威から距離をすこしでも取るため、外に出たくなくなり、人とも会いたくなくなるのだ。
そんなことをしても根本的な解決にはならないのに、脳はストレスの原因が猛獣や感染症だと判断して、身を守ろうとする。
3章「人間の心理を利用したスマホ」
これらのことを巧みに利用しているのがスマホである。
ドーパミンは人間の原動力と言える。
お腹が空いているときに食べ物を見ると、それだけでドーパミンの量が増える。
つまり食べ物を食べるという行動をドーパミンが促しているのだ。
そして脳は、新しい情報や「かもしれない」という期待が大好きだ。
周りの環境についての知識が多い方が生存確率は上がるし、
確実ではないことでも挑戦していくことで新しい食物を発見してきたのだ。
確実なものよりも不確実なものの方がドーパミンが増加するという。
つまり、脳は確実なものよりも不確実なものの方が好きなのだ。
スマホ(特にSNS)はそんな「かもしれない」期待を巧妙に利用している。
チャットが届くと音を鳴らし、大事な連絡「かもしれない」と思わせる。
自分の投稿にいいねがついている「かもしれない」と思わせるのだ。
このようにスマホから大量のドーパミンが提供され、ついついスマホを触ってしまうのだ。
スマホに我々は操られているかのようだ。
4章「集中力の低下」
スマホにより集中力の低下があるかもしれない。
人間の脳はマルチタスクができない。(これだけマルチタスクが叫ばれるが実は不向き)
集中力を低下させずに、本当の意味でのマルチタスクができる人は人口の1~2%ほどだと言われている。
マルチタスクができているように見えるが、それは実は単に集中先を切り替えているだけなのだ。
さらに、集中先を切り替えた際、集中力を100%に戻すには何分も時間がかかるという実験結果がある。
マルチタスクをすると、作業記憶(ワーキングメモリ)が低下する。
これは、今頭にある物を留めておくための「知能の作業台」の様なものだ。
しかし脳はドーパミンを分泌し、マルチタスクをするよう促してくる。
なぜなら、私たちの祖先が周りの環境に対して常に警戒状態である必要があったためだ。
そうして集中力が続かず、スマホを手に取りたくなるのだ。
それではスマホをサイレントモードにしておけば良いのではないか?
だが、そう単純な話ではない。
スマホを教室の外に置いた学生とサイレントモードにしてポケットにしまった学生を対象に記憶力と集中力を試すテストを行うと、前者の方が成績が良かった。
このことから、「スマホの存在がわずかにでもあれば認知能力の容量が減る」という結論が得られる。
つまり、スマホを無視することにパワーを使うため、脳の容量が減ってしまうのだ。
では、筋肉が筋トレによって鍛えられるのと同じように。
大量の情報にさらされる方が、マルチタスク的な集中力が高まるのではと思うかもしれないが、普通の人の脳はその逆だという。
つまり、気を散らすものが多いほど注意力散漫になる。
数年、あるいは一生残るような長期記憶を作るためには、
①集中
②固定化
が必要になってくる。
②の固定化は睡眠中に行なわれるプロセスである。
①の集中によって、脳は重要な情報であると判断し、作業記憶に入れる。
そこで初めて長期記憶のプロセスが始まるのだが、騒がしい教室のように、気を散らすものが多い場所では集中できず、作業記憶に情報を入れることができなくなる。
ただ、情報ならインターネットにいくらでも転がっているんだから記憶する必要がないと思うかもしれない。
だが、社会との対話や自分の意見を持つことには「知識」が必要になる。
情報が長期記憶として保存される際に個人的体験と融合して「知識」が構築される。
そういった意味で長期記憶は必要であり、そのための集中を確保することが重要なのだ。
5章「睡眠に悪影響を与えるスマホ」
スマホの脅威は続く
睡眠とは脳の掃除、健康の維持、そして情緒の安定や記憶と学習を行う非常に重要なプロセスだ。
だが、スマホを見ている時間が長い、特に寝る前にスマホを見る人の方がよく眠れなくなり、睡眠の質も落ちる様だ。
スマホが睡眠を妨げる原因は色々考えられるが、その1つに「ブルーライト」が考えられる。
ブルーライトは日中の晴れ渡った空から降ってくる光に似た波長を持つ光だ。
その光を浴びることで、脳は睡眠モードではなく、日中の活動モードに入り、警戒態勢に入ってしまい、睡眠モードに入る時間を遅らせてしまうのだ。
スマホを寝室に持ち込むことは、現代では非常にリスクが高い
逆にいうと、寝室に持ち込まず、離れたところにおいておくだけで解消される可能性がある。
6章「SNSが心に与える影響」
上の章でも少し書いたが、スマホではなくSNSのほうがより危険である。
人間には「周囲の人のことを知っておきたい」「自分のことを話したい」という欲求が存在する。
これは他者と協力して生活するという社交的な文化を持つ人間が持つべき欲求なのだろう。
そして、その欲求をうまく利用したサービスが、フェイスブックやTwitter、インスタグラムなどのSNSだ。
SNSの登場により、我々の社交の規模はとてつもない規模になった。(全世界の20億人がフェイスブックを使っている)
だが、SNSを熱心に利用している人の方が孤独を感じていることがわかった。
その理由の一つに「他人と比べてしまう」ということが挙げられる。
みんながどれほど幸せかという情報を大量に浴びせられて、自分は社会のヒエラルキーの底辺にいると感じてしまうのだ。
SNSを利用する人全てに悪影響があるわけではない。
精神状態が悪化する人は、神経質で心配性で、常に不安を抱えている人。さらにSNSを消極的に使用(自分は投稿せず他人の写真だけを見る)している人だ。
逆に、リアルで人と会う時間を持ち、SNSを社交生活をさらに引き立てる手段として使っている人は良い影響を受ける。
また、他人の気持ちや価値観を理解する際に必要な共感力が80年代から下がってきているという。
共感力は他人と実際に会い、表情や仕草、行動を繰り返し観察することで鍛えられるという。
SNSが共感力を低下させると断定はできないが、まさにそうだという示唆はいくつもあるという。
ここでおもしろいことが書かれている。
デジタルデトックスが良い影響を与えるという実験結果だ。
SNSの利用を1日30分に制限したグループは、普段どうり使用したグループと比べて精神状態が改善した。
このことだ。
利用時間がどれくらいが最適なのかはわからないが、利用時間を減らすだけでなく止められるならさらに良い効果を得られるだろう。
7章「子供は我慢できない」
あくまでも他国のことであるが
2017年スウェーデン人のインターネット利用の調査によると、2歳児の半数以上がインターネットを毎日使用し、7歳児のほとんどが全員になる。
11歳はほとんど全員自分のスマホを持ち、10代は日に3~4時間をスマホに費やしているという。
これはスウェーデンだけでなく、英国や米国でも同様の結果が見られる。
脳にはドーパミンを発生させ、行動を促す機関があるが、逆に行動を抑制する機関も存在する。
つまり報酬を先延ばしにする能力が存在する。
例えば、ポテトチップスを見たときに、「全部食べてしまえ」という衝動に駆られるが、同時に「全部食べたら体重が増えて恥をかくぞ」という抑制も働く。
この抑制を司る機関は脳の中で成熟が1番遅く、25~30歳になるまで完全に発達しないという。
ドーパミンをたくさん発生させるスマホの利用を10代が抑制できないのはこのためだ。
また、依存症になりやすいのも若者だ。
アルコールを規制しているのはそのためだ。
そして、スマホの利用を年齢別にみると、大人よりも10代の方が多く利用し、中でも中学生が一番使っているという。
報酬を先延ばしにする能力は将来性にも関わってくる。
マシュマロをすぐに1個もらうより2個もらうために15分待てる4歳児は基本的に、数十年後に学歴が高くいい仕事についているという。
つまり、自制心は人生の早い段階で現れ、将来性にも関わってくると解釈できる。
そして、スマホによって自制心は弱くなるという。
また、「スマホを使いながらだと学習効率が落ちる」という結論も出ている。
スマホを禁止した生徒はそう出ない生徒と比べて学習効率が上がったという、さらにその影響は成績が悪かった生徒に顕著に現れるという。
成績上位の生徒などの一部にはスマホの利用は益になり得るが、それ以外の生徒にとっては害にしかならないという。
また、睡眠や精神に不調をきたしている若者が急増していて、スマホが原因とみられる兆候がいくつもあるという。
知らず知らずのうちに、我々は依存を深めている、危険だと断じるのは早計だが、リスクがあるのを知らないことは別問題だ。
8章「運動が最善の解決策」
実は簡単な解決策がある。
運動だ。
昨今では運動不足が叫ばれる中、この運動はこのことに対するカウンターとして機能する。
現代社会と脳のミスマッチにより様々な不調が増えているという事を見てきたが、この章からは解決策を考えていく。
心身の不調の対抗策。その一つが運動だ。(筆者は最善な方法だろうと言っている)
身体を動かすと心が健康になるというのは、ただの始まりに過ぎない。基本的にすべての知的能力が運動によって機能を向上させるのだ。
運動によって集中力や気をそらされない能力、情報の処理速度までもが向上するという実験結果が得られたのだ。
ではなぜ運動によって集中力が増すのか。
答えはおそらく、私たちの祖先が身体をよく動かしていたからだと思う。
狩りをしたり猛獣に追われている時(身体を動かしている時)には、最大限の集中力が必要だ。
なので、身体を動かす事で集中力が高まるのだ。
また、運動によってストレスや不安が軽減されることが証明されている。
その理由として、体のコンディションが良い人ほど不安を感じることが少ないのだ。
2章で述べたように、不安の目的は脅威となるかもしれない対象に対して身体を「闘争か逃走か」の状態に準備することにある。
だが、コンディションが良いと、身体をパニックのギアに入れなくても脅威から身を守れると脳は判断し、不安を感じにくくなるのだ。
ではどのくらい運動すれば良いか。
答えは「週に2時間」と言われている。
それ以上してもさらに効果があるわけではないようだ。
9章「デジタル社会との付き合い」
スマホを悪と断じてきたつもりは決してないが、素晴らしいものだけあって、相応のリスクと代償が伴うということを知ってほしい
デジタル化は人類が経験した中で最も大きな社会変革で、今後数十年でどんどん社会は変化していくだろう。
また、200年前の産業革命と比較することもできる。
産業革命によって、食料の生産が効率化され、世界の大部分で飢餓は根絶した。
だが、大量のカロリーに対応しきれず、肥満などの食べ過ぎで亡くなる人の方が飢餓で亡くなる人よりも多いという。
同様に、デジタル革命によって大量の情報に触れることができる様になったことはメリットだけではないということを覚えておかなくてはならない。
デジタル化のおかげで知能を効率的に使える様になり、想像を絶する想像性を与えられたかもしれない。
だが、毎日何千もの情報に触れ、脳を攻撃していたら影響が出てしまう。
小さな情報を取り込むことに慣れれば慣れるほど、大きな情報をうまく取り込むことができなくなる。
デジタルのカロリーを大量に摂取して心身に影響が出る、なんてことにならないために、私たちはデジタルな道具を賢く使わなくてはならない。
まとめ
各章の構成は上記のような内容が書かれている。(一部独断と偏見があるのでおゆるしください。)
スマホの恩恵を受けている身で迂闊なことをいうのは問題だとおもうが、
やはり、以前から言われている通り、それ相応のリスクが発生していると思われる。
この本を読んで思うのは
寝室にスマホを持ち込むことをやめよう
ここからはじめるといいのではと思ってしまう。
切り離すのは早計だ、対策をとる必要はある
その中で、夜だけでも寝る時だけでも、スマホを当座けることで、寝る時と起きるお時を健やかに過ごすことにつながるのではと考える。
皆さんも気を付けてください
それでは